1月1日(木) 雪

今年は株式会社の登記や新店舗の準備等々、間違いなく忙しい1年になるだろう。午前2時頃から、写真家の藤原敦さんから依頼を受けた『Poet Island 詩人の島』に掲載する跋文にとりかかる。この写真集は、ハンセン病患者であった詩人の明石海人が暮らした島を撮った写真集であるが、ルポルタージュではない。なぜ藤原さんは自分に跋文を依頼したのかを考えながら、資料を読む。初日の出で夜が明けてくる。


1月2日(金) 雪

午前、こたつに入りながら箱根駅伝を見る。『Poet Island 詩人の島』の跋文にとりかかるが、なかなか思うように書けない。行き詰まったので、娘と外に出て雪だるまをつくったりして遊ぶ。


1月3日(土) 雪

午前、昨日に引き続きこたつに入りながら箱根駅伝を見る。途中から、全国大学ラグビー選手権準決勝に切り替え、筑波大学対東海大学、帝京大学対慶応義塾大学の試合を見る。夜、昨日進まなかった跋文に再度とりかかり、深夜になってようやく書き上げる。この写真集は、つまるところ2元的な世界をどう1元的にするか、という問いかけだと思った。こたつでゴロゴロしながら茅場町の店舗をどうするかについて考える。


1月4日(日) 晴

お昼過ぎに東京に戻る。夕方、大宮八幡宮に初詣に出かける。おみくじを引くと小吉と出る。「願望」あせらず好機を待て。「商売」高からず、利すくなし。など。茅場町の店舗をどうしようか考えながら、善福寺川公園を通り抜けて自宅に帰る。


1月5日(月) 晴のち曇

午後、茅場町のスターバックスコーヒーにてフォトグラファーの高橋マナミさんと『東京旧市街地を歩く』の撮影打ち合わせ。まずは10日に、聖橋、湯島聖堂、昌平橋、万世橋、万世橋駅、鷹岡ビルを撮ることを確認する。日本の伝統建築が木×紙×土であるのに対し、これらの建築の特徴を石×鉄×コンクリートととらえ、その観点から建築物のカタチが最も美しく見える角度やトリミングを探りたいと意気込む。


1月6日(火) 曇

午前、神宮前の服部みれいさんの事務所へ。携帯電話を持たないことについての対談。自分は2006年から携帯電話を所有していない。腕時計も持っていないから、正確な時間がいつも分からないが、体内時計が正確にできていると思うので、いつもその感覚を信じている。どうしても正確な時間が知りたい時は、例えば電車内なら隣の人の時計をチラ見したりする。電話が必要な時には公衆電話をいまだに使っている。そんなことを話し合う。


1月9日(金) 晴

14時、中目黒のスマイルズへ。同社の三好さんと株式会社森岡書店の定款について再度内容を確認する。その後、公証人に定款認証をしてもらうため日本橋公証役場へ向かう。定款認証は、どこの公証役場でもできるのだが、日本橋公証役場は昭和3年築の日証館に入っているためここにした。渋沢栄一邸の跡地でもあるし、縁起もいいだろう。この機会にビル内部に入ってみる。公証人はネイビーのスーツにグレイのネクタイと黒の革靴。定款を一通り確認すると、右手をあげながら一言、「がんばってね」。東京証券取引所前のタリーズコーヒーでコーヒーをいただく。


1月10日(土) 晴

朝8時、高橋マナミさんと御茶ノ水駅構内にて待ち合わせて、聖橋の裏面や、ホームの階段から撮影を始める。今日も非常に寒いが、途中休憩をはさむことなく、たんたんと近代建築と向き合う。撮影終了後に神保町の三省堂に立ち寄り、向田麻衣さんの『美しい瞬間を生きる』を求める。


1月15日(木) 雨

午前。本日大安吉日につき、杉並法務局に登記の手続きに行く。荻窪駅北口から西武バスに乗って10分ほど。バスから降りると激しい雨が降っていて幸先が良くないと思うが仕方がない。2階の事務局で印紙を貼り、無事に定款を提出。書面に問題がなければ数日中に登記が完了するという。帰り際、駅前の春木屋で中華そばをいただく。850円。夜、第152回芥川賞は小野正嗣さんの『九年前の祈り』に、直木賞は西加奈子さんの『サラバ!』に決まったというニュースを読む。


1月16日(金) 晴のち曇

朝8時40分、高橋マナミさんと銀座駅構内で待ち合わせ。和光、松屋別館、ヨネイビル、奥野ビル、竹田ビルを撮影。今日も冷えるので、途中であたたかいココアを飲んで暖を取る。12時頃に鈴木ビルを撮影して本日の予定は終了。春にはここで新しい店舗を運営しているのかと思うと、これからやらなくてはならない仕事の量に目眩がしそうになる。大丈夫だろうか。高橋マナミさんに挨拶をして、急いで東京駅に向かう。中央線に乗って八王子への多摩美術大学へ。平出隆さんの研究室を訪ねて、平出さんが撮っている写真についてお話を伺う。


1月18日(日) 晴

朝7時、高橋マナミさんと銀座駅構内で待ち合わせ。今日は一段と寒さが厳しい。電通、丸嘉ビル、築地本願寺、聖路加病院、勝鬨橋の撮影。築地本願寺では中央区の成人式がちょうど行なわれていて、晴着が美しい。駐車場の脇にある酒井抱一のお墓の前で手を合わせてお参りをする。


1月19日(月) 晴

杉並法務局から電話があり、定款にある「キュレーション」という単語の意味が一般的とは言えないので説明してほしいとのこと。もし適切でないなら、定款を修正して、もう一度、公証人の認証を得なければならないとも。「キュレーション」は一般的に使われている言葉だと思っていたが、仕事の分野が異なると馴染みがないということだろう。「作品や資料を集めて選択して、展示を行うこと」と言ってみる。担当者は、確認してもう一度連絡すると言った。


1月21日(水) 曇のち雨

午前、鈴木ビルの賃貸契約書に印鑑を押して、契約が成立。お昼に茅場町の長寿庵でせいろをいただく。夕方、杉並法務局から電話があり、「キュレーション」問題が解決し、登記が明日には完了するとのこと。これを受けて、会社設立日は、定款を提出した1月15日となった。


1月22日(木) 雨

営業終了後、ある方と茅場町の店舗を今後どうするかについて相談。自分としては茅場町の店舗を移転して銀座だけにするつもりだが、その方はいくつかの事務所と店舗を経営していて、経験から「銀座と茅場町の両方を運営できる可能性は高い、茅場町の店を閉めるのは実にもったいない」とのアドバイスをいただく。銀座の店舗の売り上げ予想をもう一度検討するなど、今後も相談を続けていくことになった。たしかにこの空間を手放すのは惜しいと自分でも思う。


1月26日(月) 曇

14時、IMA online編集部の米田さんと連載の打ち合わせ。コーヒーを飲みながら今後のテーマと進行を確認する。帰り際に丸の内の丸善に立ち寄り『大東京繁昌記 下町編・山の手編』を求める。岸田劉生が近代建築を非難した文章があり、それを読み返したくなった。


1月27日(火) 曇

午前、三鷹駅構内のスターバックスコーヒーにて、某誌東京特集の打ち合わせ。その後、吉祥寺のOUTBOUNDを訪ねる。小林和人さんに挨拶をしようと思ったが、火曜日は定休だった。東急裏の春木屋にて中華そばを注文。昨晩入手した『大東京繁昌記 山の手編』を読みながら出てくるのを待つ。


1月28日(水) 晴

朝9時、スマイルズの松尾さん、田原さんと八丁堀のCawaii Bread & Coffee にて、今後の株式会社森岡書店の進行について打ち合わせ。午後、刺繍作家の沖潤子さんに、銀座の店舗での展示会を電話で打診する。昨年に文藝春秋から出版された作品集『PUNK』を「1冊の本を売る本屋」の最初の企画にしたい。


1月29日(木) 晴

午前、中目黒のスマイルズにて銀行の口座開設の諸手続きを行う。あらかじめ用意されたいくつかの書類に判を捺し署名をする。出資だけでなく、このような手続きをサポートしてくれるスマイルズにあらためて感謝しなければならない。夜、戦国時代末期に小田原で創業し、蒲鉾の販売等で450年以上の歴史を誇る美濃屋吉兵衛商店が経営破綻したというニュースを読む。


1月31日(土) 晴

朝、清澄白河駅構内にて高橋マナミさん、編集の渡邉浩行さんと待ち合わせて、清洲橋の撮影を行う。その後、半蔵門線に乗って三越前に移動し、日本橋三越の内観、外観を撮影。再び半蔵門線に乗って神保町へ。学士会館で名物のクラーク博士のカレーをいただき、神田教会、一誠堂書店などを写真に収めてもらう。


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森岡督行 yoshiyuki morioka

「森岡書店」主人。1974年山形県生れ。著書に『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『荒野の古本屋』(晶文社)、『東京旧市街地を歩く』(エクスナレッジ)など。「青花の会」編集委員。
facebook:yoshiyuki.morioka.7


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