2月2日(月) 晴

営業終了後に表参道のtakram design engineeringへ。小店には開業以来ずっとロゴマークがなったがが、あたらしい株式会社森岡書店にはロゴマークをつくりたいと思い、同社の渡邉康太郎さん、山口幸太郎さんと相談。自分としては、鈴木ビルあっての事業だから、その住所をモチーフにしたマークにしたい、また図像としては菱形に普遍性を感じていることなどを伝える。菱形は本のかたちにも見える。帰り際に原宿駅前の九州じゃんがららあめんにて、ぼんしゃんラーメンらあめんをいただく。


2月3日(火) 晴

夕方、東西線に乗って神楽坂のla kaguへ。BACHの幅さんから依頼を受けて「〈10×10〉10人の選ぶ、10冊の本。」に参加しているので、その書棚を見る。自分は「もの」にまつわる本を選んだ。『民藝四十年』(柳宗悦)、『もののはずみ』(堀江敏幸)、 『あたらしい日用品 timeless, self-evident』(小林和人)、『手仕事の生活道具たち』(片柳草生)、『裸形のデザイン』(大西静二)など。そのあと、話題のかもめブックスを訪ねて、展示中の「wassa モノローグ」展を見る。りゅうほうにて東京ラーメンを注文、運ばれてくるまでの間に「週刊読書人」を読む。


2月5日(水) 曇

お昼、日本橋丸善にて戌井昭人さんの『すっぽん心中』(新潮社)を求める。ランチに早矢仕ライスをいただいたあと茅場町に戻り、CMYKの吉里さんと鈴木ビルの店舗の内装についての打ち合わせる。正面は細胞膜のようなガラス張りにすること、床の縦横の比率が黄金比になるようにすること、ファサードに張り付いたモルタルを剥がすこと。喫茶店が使っていた看板を外すこと等、基本的なことを確認する。テーブルやカウンター、照明等の什器は自分が探すことになった。営業終了後、デザイナーの新保慶太さん・美沙子さんとカメラマンの高橋マナミさん、編集の渡邊浩之さんとで『東京旧市街地を歩く』のデザイン面の方向性を検討する。


2月6日(金) 晴

午後、渡邉康太郎さんと山口幸太郎さんがご来店。茅場町の店内を撮影した後、タクシーに乗って鈴木ビルへ。車中では、自分が影響を受けた10冊の本について質問を受ける。ロゴマークを作成する資料にするという。鈴木ビルの外観内観も撮影。渡邊さんと山口さんと別れて徒歩で茅場町に戻る。途中で八丁堀の書肆逆光とプラグマタに立ち寄る。夜、什器を販売している業者のサイトでテーブルとカウンターを探す。福岡のKrank、EEL、広島のANCHORETなど。


2月8日(日) 雨

午後、明日からはじまる飛松陶器の飛松隆弘さんの「Glaze on Glaze」展の搬入と飾り付けを行う。会場に貼り付けられた「その2色は偶発的な濃淡で発色し、釉薬の厚みによって様々な表情を生む」という飛松さんの言葉は、陶芸だけでく様々なことにあてはまるだろうと思う。夜、ある方と茅場町の店舗を存続させられるか否かの相談を行う。まだ迷っている。家賃のことを考えると出来るだけ早く決めたい。リミットを今月末までとする。


2月9日(月) 晴

北鎌倉の澁澤龍彦邸を訪問。澁澤龍子さんに、澁澤龍彦が残した写真についてお話を伺う。澁澤龍彦の書斎は雑誌で何度か見た光景だったので、おもわず記念写真を撮ってしまった。澁澤龍彦が旅先で写したスナップをまとめたアルバムも拝見。川田喜久治と桑原甲子雄から勧められたカメラを使っていたこともあったという。夜、ネットで什器の検索。


2月10日(火) 晴

午後、吉里さんと内装の相談。吉里さんは「シンプルな内装なので、施工業者さえ決まればすぐに完成する」という。ただし、依頼したい施工業者が多忙なため具体的な工期はまだ分からないとも。心配なのはやはり予算。吉里さんの 「いくらまで出せる?」という質問に対する私の返答額に、吉里さんの表情が一瞬、凍り付いたように見えた。おそらく私の予算はかなり厳しいものだったのだろう。にもかかわらず、何とか落としどころを見つけようとする吉里さんの姿勢に頭がさがる。深夜、ネットで什器を探すが、なかなか良いのがない。


2月11日(水) 晴

午前、什器の検索をネットで行う。午後、リトルプレスの『Bon Appetit』で連載していた「本と店主」を書籍化するために、自分の最近の仕事内容が分かる資料を送ってほしいと、担当編集者の長井史枝さんからメールをいただく。もうこれ以上仕事を増やせる状況ではないが、せっかくいただいた機会なのだから、ここは馬力を出すしかない。夜、またネットで什器の検索を行う。夜食に鶏の唐揚げを食べる。


2月12日(木) 晴

夕方、中目黒のスマイルズへ。会社の謄本(履歴事項全部証明)、印鑑証明書、定款、それぞれのコピーを持参。税務署等に届け出るいろいろな書類に署名し、税理士の先生と決算の時期などを相談する。夜、ネットで什器の検索を行うが、やはりなかなか良いのが見つからない。探しているのはテーブルとカウンター。夜、kvina監修の『恋する東京 東京デートガイド』で紹介するデートのあとに読む本として、パウロ・コエーリョの『11分間』をあげる。小林エリカさんから依頼を受けた。深夜、引き続きネットで什器探し。


2月13日(金) 曇

午前、CMYKの吉里さん、上原さんと自転車に乗って鈴木ビルへ。店舗の採寸を行う。吉里さんから、「壁のやれ具合を生かして薄くペンキを塗ったらどうか」という意見をいただく。外壁に付着したモルタルと楕円形の看板について、同席した不動産業者に質問をする。「看板の下のレンガが大きく破損していて、それを隠すためにこのような看板を取り付けている」とのこと。これらを剥がすのはかなりの手間がかかることが予想されるが、自分は何としても剥がして、昭和4年の竣工時の質感を復活させたい。夜、長井さん宛に最近の自分の仕事をまとめて送信する。


2月14日(土) 晴

今日はバレンタイデーということで、展示中の飛松夫妻から、自分の顔とそっくりに描かれたチョコレートをいただく。何度見ても似ている。時間を割いていただき、ありがとうございます。帰宅すると娘もチョコレートを用意してくれていた。そういえば高校生時代の自分は一度もチョコレートをもらったことがなかった。共学だったのだけれども。いただいたチョコレートを食べながら、ネットで什器の検索を行う。ありがとうございます。


2月15日(日) 晴

営業終了後、カバンメーカーに勤務するT氏と店内にて面会。T氏は以前、店番をしていた私に、「自然がつくったもの、たまたまできたものの写真集を探しています」と質問をしたことがあった。裾野が広すぎる要望で、考えようによっては、海であれ、波であれ、山であれ、石であれ、月であれ、人の顔であれ、なんでもオッケーだが、私は無難に、植物を主題にしているカール・ブロスフェルトと、アンナ・アトキンスの写真集を勧めた。実はこの方はカバンのプロダクトデザイナーで、後日、「あの時は、今後のモノを考える指針になるような写真集を探していたんですよ」と話してくれた。新しい店舗ではオリジナルのトートバッグを販売しようと思い、T氏とその打ち合わせを行う。書店とはいえ、書籍の売り上げだけではなかなか厳しいものがある。物販にも重点をおきたい。


2月17日(火) 曇

夜、鈴木ビルの外壁に付着したモルタルと楕円形の看板について飛松夫妻に相談する。レンガが破損しているなら飛松陶器の力で復元できないものだろうか……。外壁の画像を見てもらっての返答は、「看板が付いてた日焼け跡が他にもかなりありますね。難易度高そうです。仮に取ったとしても半円の跡が残りそうですね」。そして前向きに検討してくださるとのこと。あらためて頭が下がる。感謝のかぎりです。深夜、ほとんど日課になっている什器の検索。


2月19日(木) 晴

夜、ネットで什器を検索していると、札幌のUNPLUGGEDのサイトで売りに出されているチェストに目が止まる。チェストだが、カウンターとしても使えそうな造形。画像で見る限り、引き出しの線の細さと、その配列のバランスが、鈴木ビルに調和しそうだ。この引き出の上で展開されるお客さんとのやり取りが、自然と立ち上がってくる。私は雑貨や什器を求める際、そのモノを通じてこのような想像が生まれるかどうかが重要だと思っている。これは間違いないだろう。明日、吉里さんにも確認をとろうと思う。


2月20日(金) 晴

早朝、日本橋の三井タワーへ。WIRED CAFEにて開催される「アサゲ・ニホンバシ」に登壇。「アサゲ・ニホンバシ」は日本橋の老舗で働く人と新参者とを、「前の100年(マエヒャク)」「後の100年(アトヒャク)」という呼び方で分け、それぞれの仕事について話すという会。約200人ものお客さんが参加してくださった。日頃の仕事について、自分もスライドを交えて述べさせていただく。その後、日本橋に点在する近三ビルや日銀、三越、高島屋などの近代建築の魅力についても話をさせてもらった。終了後、自分のもとへ真っすぐ歩み寄ってくださる方がいた。その人の顔を見て驚く。何と自分とそっくりではないか。髪型も眼鏡も。お互いにまじまじと顔を見つめ合う。双子といっても通じるのではないかと思うほど似ている。その人はなだ万の児玉ケビンさんであった。徒歩で茅場町に戻り、長寿庵でせいろをいただく。午前中だけで一日分の仕事をした感じがする。午後、吉里さんに昨晩のチェストを見てもらう。これなら良いということで、早速電話をして発注する。もともと何のために使っていたかは不明だが、フランスで買い付けたものだという。


2月21日(土) 晴

午後、ボへミアンズ・ギルドの夏目滋さんが、神保町の靖国通り沿いのビル内に主に印刷物の現代アートを取り扱うギャラリーをオープンしたので、そのレセプションにうかがう。武満徹の直筆の楽譜も展示販売されている。価格は30万円。資金に余裕があれば買ってしまいそうな佇まい。その後、半蔵門線と東横線を乗り継いで代官山へ。蔦屋書店で開催されるsmbetsmbの新保慶太さん、美沙子さん夫妻のトークイベントに登壇させていただく。お2人は昨年、東京都庭園美術館リニューアルオープンのデザインまわりの仕事を担当された。写真を撮った高橋マナミさんと一緒にお話をお聞きする。


2月23日(月) 晴

営業終了後、平松麻さんがご来店。平松さんは絵を描いていて、これから画家として歩みだそうとしている。作品を見せていただいて「本」の絵に目が止まる。このイメージは、もしかすると、これから進行しようとしている『本と店主』の表紙にちょうど良いのではないだろうか。自分だけの意見では決められないことなので、編集者とデザイナーにも絵を見てもらおうと思う。深夜、ネットでテーブルを検索していたら、いつの間にか午前3時になっている。ここ数日のあいだで、いまネットで売りに出ている什器の大部分を閲覧したのではないだろうか。寝不足が続く。


2月26日(木) 雨

午前、久しぶりに通勤電車で本を読む。鬼海弘雄さんの『誰をも少し好きになる日 眼めくり忘備録』。本書を読んで思ったのは、鬼海さんは常に少年時代の寒河江の風景を探し求めているのではないか、ということ。インドやトルコ、東京の風景を写した写真なのに、故郷を綴った文章と対応しながらページが進んでゆく。あらかじめ少年時代の心象風景があって、現実にそれが現れたときシャッターを切るのではないかと思いたくなるほど。夜、ある方と茅場町の店舗を存続させるかどうかの相談をする。結論は存続。思い切って茅場町と銀座の2店舗を運営することに決める。


2月27日(金) 晴

午前11時、通勤途中、神楽坂で下車。la kaguにてアロマキャンドルを求める。ランチにホットドッグのセットをいただいた後に、追加でフレンチフライも注文する。が、運ばれてきたポテトの量の多さに驚く。午後、CMYKの上原さんが銀座店の完成予想図をパースで見せてくださる。具体的なイメージが立ち上がり、これならやっていけそうだという期待に胸がふくらむ。


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森岡督行 yoshiyuki morioka

「森岡書店」主人。1974年山形県生れ。著書に『BOOKS ON JAPAN 1931-1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『写真集 誰かに贈りたくなる108冊』(平凡社)、『荒野の古本屋』(晶文社)、『東京旧市街地を歩く』(エクスナレッジ)など。「青花の会」編集委員。
facebook:yoshiyuki.morioka.7


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