20190331

表参道 matohu でデザイナーの堀畑さん、関口さんと打合せ。津軽塗のボタン。津軽塗? 工芸を(かたちでも用途でもなく)技法として考えるとこのように生かされる。これから京都。人が多そう...。





20190329

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
https://www.kogei-seika.jp/about/booksellers.html
*青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
今号から巻頭に望月通陽さんの型染絵を貼付しています。印刷ではなく、型を彫り、和紙に染めた作品です。望月さんみずから切りそろえてくださった染絵を、1枚ずつ、手わけして糊で貼りました。
……
望月通陽《不安な怪物》 2018年 型染

碾いたもち米と米ぬかをこねて型染めの糊を作る。この割合の加減で染め上がる絵の表情が変わる。もち米が多くやわらかであれば、絵は縁にまるみを帯びておだやかになり、逆に米ぬかを増やしてねばりを減らすと、絵は縁を際立たせてにわかにきびしい表情になる。さて今回染めたこの奇妙な動物も、もう少し米ぬかの多い糊であったなら、こんなに長閑な姿ではなく、むしろ伝説の勇者に退治されるべく威厳ある怪物にさえなれた筈である。(望月通陽/染色家)





20190328

「さる山スタイル」展はじまりました(於神楽坂一水寮/4月7日まで/木金土日13−19時/今日28日は青花会員と御同伴者のみ)。「さる山」閉店を機に、骨董商、デザイナー、音楽家である猿山修さんの仕事を紹介します。猿山さんがあつめた古物、手がけた器、カトラリー、グラフィック、演奏するCDその他、多くの品々を展示販売します。貴重な資料もお借りしました。
https://www.kogei-seika.jp/gallery/20190301.html





20190326

今日まで札幌でした。みなさんのおかげでみのりある取材ができました(工芸青花12号用)。写真1は熊と大通公園。
……
明日夜は金沢百枝さんの講座「西洋中世のタイル」です(自由学園明日館@目白)。いろんな動物文様もみられるはず。写真2は大英博蔵13世紀フランスのタイル。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=271







20190323

昨日今日と京橋で取材。写真は草友舎(の五十嵐さんの花)。しみじみします。





20190322

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
https://www.kogei-seika.jp/about/booksellers.html
*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
第6章は堀江敏幸さんの連載。紀行、随想、伝記が渾然となる川のながれのごとき文、ぜひ味読してください。〈これほど豊かに髑髏を表現できる職人たちの仕事に対して、若いクートラスはどのような想いを抱いていたのだろう。彼のカルトには、大きなテーマのひとつとして髑髏が繰り返し登場している〉
……
6|ロベール・クートラスをめぐる断章群5

作家の堀江敏幸さんによる、フランスの画家ロベール・クートラス(一九三〇—八五)の紀行的評伝、第五回です。連載のこれまでをふりかえると─第一回は銀座の画廊でクートラス作品と出会ったこと、評伝を書くにいたるいきさつ、パリの墓地へ。第二回は画家の出生時と幼少期、とくに戦時下ドイツへ家族で移り、そこでみたことに思いをはせる。第三回はフランスのオーヴェルニュ地方へ。義父と暮した一〇代のうすぐらい日々。紡績工場づとめのかたわらはじめた木彫。第四回はクレルモン=フェランでひとり暮し、ロマネスク美術との出会い、石工修行、ブールジュ大聖堂の修復工事─そして今回は、ノルマンディー地方ルーアンへ。S





20190320

今週(明日)と来週(木曜)、ふたつの工芸講座があります。
……
■高木崇雄|工芸入門7|スーパーノーマルと民藝
□3月21日(木祝)15時@工芸青花(神楽坂)
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=270
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■工芸と私30|猿山修|「さる山」のこれまでとこれから
□3月28日(木)18時半@一水寮悠庵(神楽坂)
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=272
……
写真は閉店直前の「さる山」で古楽器を弾く猿山さん。来週28日から青花で「さる山スタイル」展です。
https://www.kogei-seika.jp/gallery/20190301.html





20190318

今日は終日駒場の民藝館で撮影。「直観」展(3月24日まで)。品名も解説もいっさいなし(最後までない)の展示が話題ですが、私のまわりでも、来場者にも好評とのこと。批判、罵倒も覚悟のうえでひとりで企画、実現した民藝館の月森さんの心意気に感じいる。「解説デトックス」が思いのほかとてもすがすがしい(民藝館のキャプションはふだんからひかえめですが、それでも、文字の残像のつよさを思い知る)。40年まえから民藝館の蔵品を(柳宗悦、宗理、その他由来の如何をとわず)愛しつづける月森さんならではの、ありきたりでない選択、とりあわせも新鮮。(菅野)
http://www.mingeikan.or.jp/events/special/201901.html





20190317

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
https://www.kogei-seika.jp/about/booksellers.html
*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
帰国しました(金沢百枝さんはまだイギリスです)。さて。『工芸青花』11号7章は茶の湯の「名物」論です。茶人の木村宗慎さんの提案による特集です。茶については、かつて樂吉左衞門さんと『茶碗と茶室』(2008年『芸術新潮』特集。12年書籍化)、木村さんと『利休入門』(2010年)をつくりました。いずれも茶の湯の歴史をふりかえりつつ、底意としてはその現代的意義を考えようとしたものです。以下は7章のリードです。くりかえしますが、趣味、たしなみとしての茶の湯を否定するつもりはありません。〈茶の湯は過去に完成したすぐれた文化であり、新味の余地も必要もないように思う〉。それはすでに起ったことであり、いま起きつつあることではありません。したがって工芸誌の編集者として記事の観点を新設しがたいだけです。〈過去の評価をなぞっても屋上屋を架すだけ〉なので。「侘茶湯」から400年強、「民藝」から100年弱、いずれも当時の時代状況により創出された概念です。いまは状況がちがうのだから、いつまでも過去の概念によりかからず(批判も「よりかかり」の一種です)、いまにふさわしく、しかも100年後にも語られうるような工芸概念の創出をこころみたいと思っています(坂田的「古道具」に期しています)。(菅野)
……
7|名物とはなにか

名物とは由緒ある茶道具のこと。利休の時代より古くからある名品を「大名物」、利休時代のものを「名物」、小堀遠州由来のものを「中興名物」とよびますが、その分類は大名茶人で大収集家でもあった松平不昧(一七五一—一八一八)によります。その不昧による『古今名物類聚』や、近代の『大正名器鑑』などの「名物集」、そして遠州、不昧、加賀前田家や仙台伊達家といった茶数寄の大名家等の「蔵帳」(蔵品目録)所載であることも、名物のひとつの条件のようです。ただし厳密な定義はなく、取材した茶人の木村宗慎さんによれば「名物はふえてゆく」とのこと。

今回撮影したのは加賀前田家伝来の古瀬戸耳付茶入、一点のみです。前田家の蔵帳にあり、『古今名物類聚』と『大正名器鑑』にも載るまぎれもない名物です。名物にふさわしく、外箱、内箱、挽家(茶入をおさめる容器)、仕服、四方盆(茶入をのせる)、同作所載の名物集など、この茶入の由緒と価値をしめすそれぞれがしっかりとそなわり(ほかに風呂敷や古い紐などもあります)、このページ数になりました。

「名物」の記事、茶道具の記事なのでこうしました。意味あることだと思います。しかしいっぽうで、やはり茶の湯の記事はむつかしい、つくる動機をみいだしにくい、とあらためて感じました。〈『工芸青花』は、この時代の人々がなにを感じて、なにを考えたかを、(後世に)つたえるための本〉と公言しているのですが、茶の湯は過去に完成したすぐれた文化であり、新味の余地も必要もないように思うからです。名物はすでに評価されたものであり、それを否定するのならともかく(とくに否定したいとは思いません)、過去の評価をなぞっても屋上屋を架すだけです。

そんなことを木村さんに話して、反論を書いてもらいました。S





20190315

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
https://www.kogei-seika.jp/about/booksellers.html
*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
第5章は「骨董と私」。毎号ではないのですが、個人の収集品を紹介するシリーズです。今回は奈良在住の杉村理さんの仏教美術です。骨董随筆という曲折にとむジャンルの数少ない継承者だと思います。以下のリードの前半は杉村さんではなく、私の考えです。「古道具」概念の現代性/有効性を確信しています。(菅野)
……
5|骨董と私

古い工芸品をどうみるか、どう評価するかは、立場によってかわります。いまの日本では「美術史」「歴史学/考古学」「古美術」「茶の湯」「民芸」「骨董」「古道具」などのみかたがあり(かさなるところもありますが)、たとえば「美術史」的には国宝でも、「骨董」的には凡作ということはままあることです。よいことだと思います。いまおもしろいなと感じているのは「古道具」と「骨董/古美術」との差違で、後者(の両者の差違も興味ぶかいですが)は近現代にすでにあるていどの語誌的蓄積があるのにたいして、「古道具」概念は現在進行形で生成中の感があり、そこにはとうぜんこの時代、社会のなにごとかが反映されているはずなので、現代人のひとりとして、おもしろくないわけがないのです。

〈美術史の専門家は、時代の明白な作品を基準にして類例を集め、それぞれの特徴を分類し帰納的に編年を行い、様式論を展開する。骨董屋さんの頭の中にはその様式論がほぼ入っているわけだが、学説の記述でいちおう仕事が終わる学者研究者と違って、商売という行為のはじまりはその先にある。早い話が、典型的様式を踏んでいても売れないものは売れない。それを売れるようにするのは、店の主人の、そして店そのものが、脈々として持つ美意識ではないかと私は思う。(略)美意識の合わない店からはしぜんと足が遠のく。客は客でそれなりの「理想」を持っているからだ〉(杉村理)

この特集は奈良在住の収集家、杉村理さんの収集品を紹介しつつ、杉村さんの骨董随筆を掲載します。「美術史」と「骨董」の差(熱量差)がよくわかります。その差は「所有」の有無で説明されることが多いのですが、それだけでしょうか。S





20190314

ロンドン取材もほぼ終り、金沢百枝さんはイギリス・ロマネスクのツアーに旅立ちました。よい旅になりますように。
https://www.kogei-seika.jp/news/tour2019.html
*旅の様子は金沢さんのツイッターで。
https://twitter.com/momokanazawa
……
神楽坂では nakabanさんの「ロマネスクと私」展、最終週がはじまりました(日曜まで。13−19時)。大英やV&Aのようなところではロマネスクのロマネスクらしさがきわだつことに気づきます。
https://www.kogei-seika.jp/gallery/20190201.html
……
あらたな催事も一般公開しました。

■講座|工芸と私30|猿山修|「さる山」のこれまでとこれから
□3月28日(木)18時半@一水寮悠庵(神楽坂)
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=272

■演奏会|内田輝|クラヴィコードの夜
□4月17日(木)18時半@自由学園明日館ホール(目白)
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=274





20190313

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
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*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
第4章は川瀬敏郎さんの特集。キャリアのながい花人で、古典派と目されることの多い作家ですが、近年(2012年刊『一日一花』以後)の花風はそれ以前とはかなりちがっています。ひとことでいえば、ととのえられたかたちへの無関心です(それは「やつし」ともことなります。かつての川瀬さんの「やつし」はみごとにととのっていました)。『一日一花』は大震災直後にはじめた鎮魂の花でした。作家と時代とのかかわり、そのあらわれかたの深度をあらためて考えさせられます。以下リードです。(菅野)
……
4|川瀬敏郎 籠にいける

前号は唐物籠でした。それは上手の、真行草でいえば「真」の花入です。今回は魚籠や農具など、「草」の籠。はじめから籠で二回と決っていました。花人の川瀬敏郎さんとは二〇年以上まえから、三桁をこえる回数の取材をしてきたので(月刊誌で連載をしているとおのずとそうなります)、川瀬さんにとって籠がどれほど大事か、桜が花の代名詞であるように、籠を花入の代名詞のように考えていることも理解していたつもりでした。なげいれという「草」の様式に、たてはな的「真」がおりたたまれていることを独自に感得し、みずから実践してきたことが川瀬さんの花の歴史的意義であり、そうした思想をあらわす器として、つまり「草」でありながら「真」に変容しうるものとして、たしかに籠ほどふさわしい器はないのでしょう(ここでいう「真」は唐物籠の「真」とはことなり、すなわちすでにある「真」ではなく、あるときあらわれる、なるものとしての「真」です)。

おそらく四桁に近い数の籠を手にしてきた川瀬さんが手もとにのこしてきたもの、そこからさらにえらばれた十数点を今回(昨年九月)撮影したのですが、むろんそれらは造形的にも、いわゆる味のよさにおいても、みごとな籠ばかりでした。しかし取材時の川瀬さんはそれにはほぼ無頓着で、籠のかたちはみえなくていい、とまでいうのでした。そして今回は花もそうでした。きえること、みえなくなることによりあらわれるもの。あるものではなく、あらわれるものとしての花をいけようとしていたのだと思います。S





20190311

よく晴れて、風のつよい日でした。テンプル教会そばの紫木蓮。花はどこでみても心なぐさむ。







20190309

取材がはじまりました。ロンドンでも教会から。







20190308

『工芸青花』の新刊11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
*11号の販売店一覧、更新しました。
https://www.kogei-seika.jp/about/booksellers.html
*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
写真はアヴィニョン旧教皇庁のタイル(14世紀初)。ちょうど去年のいまごろ、美術史家の金沢百枝さんと取材していました。このタイルをきっかけに、イタリアのマヨリカ焼の産地(であり教皇ゆかりの地)をたずねる旅でした。今年は昨日からロンドンです。なぜ西欧中世の取材をつづけるのか。美術と工芸を分化させた場所で、分化直前のありようを凝視しておきたいのかもしれません。(菅野)
……
2|欧州タイル紀行

昨年の冬、ロマネスク美術(西欧一一—一二世紀)の研究者である金沢百枝さんから、一四世紀にフランスのアヴィニョンにあった教皇庁の舗床タイルの図録をみせてもらいました。白地に焦茶の線と緑釉でいろどられたそれは、動物文も抽象文ものびのびしていて心が晴れます。初期のマヨリカ焼に似ていて、均斉をおもんじる西洋美術史では傍流といえるロマネスク美術にもつうじる魅力です。ふしぎなのは、「国際ゴシック様式」のさきがけとされるアヴィニョン教皇庁の壁画は優美で宮廷趣味的で(つまり上手で)、タイルの文様とおよそ調和的でないことです。

今回の記事は昨年三月、金沢さんとアヴィニョンほかで取材したものです。教皇庁のタイルが近郊ユゼスで焼かれていたことなど、近年の研究成果も紹介しています。イタリアのオルヴィエートとヴィテルボをたずねたのは、「教皇」(ともに離宮がありました)と「マヨリカ焼」(どちらも産地でした)の線でアヴィニョンとつながり、タイルの源流をみいだせるだろうかと考えたからでした。S





20190307

画家nakabanさんによる「ロマネスクと私」展、今日から再開しました(神楽坂一水寮/3月17日まで/木金土日13−19時)。ゾディアック叢書/アンジェリコ修道士が抽出したロマネスク的なるもの(とてつもなく魅力あるもの)に、画家としてのみこまれないために、nakabanさんがこうじた方法は色と文字と貼絵でした。
https://www.kogei-seika.jp/gallery/20190201.html











20190306

『工芸青花』の新刊11号の紹介をつづけます。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html

*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
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第1章は「山茶碗」。60ページの大特集になりました。写真は坂田和實さん(古道具坂田)のもの。ほかに青井義夫さん(甍堂)、小澤實さん(俳人)、勝見充男さん(自在屋)、清水喜守さん(古美術28)、高木孝さん(古美術栗八)、秦秀雄旧蔵品、北村美術館(北村謹次郎旧蔵)、日本民藝館(柳宗悦旧蔵)のものを撮影、掲載しました。以下、リードです。(菅野)
……
1|山茶碗

山茶碗とはなにか。やきもの事典等の説明をさらにかいつまんでいうと、「東海地方の中世窯で平安後期(一一世紀後半)より生産された日常雑器。穴窯でかさね焼きされた無釉の碗で、口径一五糎、高さ五、六糎ほど。生産者は兼業(半農半陶)ではなく専従の小集団か。山茶碗の名は窯址のある山麓で陶片が出土することから。行基焼、藤四郎焼とも」。猿投、常滑、渥美ほか、おもな窯址(群)は四八頁の地図に記載しました。

〈名古屋市の東部に広がる丘陵地帯に分布する五〇〇基ほどの窯からなる猿投山西南麓古窯跡群(略して猿投窯)を始めとする古代の灰釉陶器窯は、中国陶磁の参入による中央権門との需給関係の悪化や中部・関東地方の農村地帯での日用雑器の需要増大に対応するために、十一世紀後半には施釉技法を放棄して無釉の山茶碗を主に生産する窯に転換していった。(略)知多半島の陶器生産も例外でなく、猿投窯の陶工が南下して常滑窯を形成したと考えられている〉(赤羽一郎「中世陶器の流通—常滑窯製品を追って」/網野善彦・石井進編『中世の風景を読む3—境界と鄙に生きる人々』より)

取材は山茶碗を愛する六人と、山茶碗を蔵するふたつの美術館でおこないました。掲載したのは二四碗。側面、見込、高台の写真はかならず載せて、通し番号を附しています。出自が雑器のせいか、一部(今回の六人のような)をのぞけば美術業界ではあまり評価されない山茶碗ですが、私は、内外とわず、もっとも好きなやきもののひとつです。S





20190305

新刊の『工芸青花』11号を紹介します。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html

*3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
一昨日は熊本で村上隆さんと、昨日は多治見で安藤雅信さんと「生活工芸」の話をしました。11号では「生活工芸以後の器」という特集をくんでいます。「生活工芸」があればこそ、という意味です。以下、リードです。(菅野)
……
3|大谷哲也 「生活工芸」以後の器

前号で黒田泰蔵さんの白磁の記事をつくりました。この記事はその続篇といえます。大谷哲也さんは一九七一年神戸生れ、信楽に住まいと工房をかまえ、陶芸家の桃子夫人と娘さんたちと大きな犬と暮しています。助手はいません。大谷さんの器の特色は轆轤成形の白磁、定番式で(つまり同形同寸の器があり、替えがきく)、工業製品とみまがうほどに「手」のあとを消しています。後世に日本の食器の様式史(ただし手工芸史)が書かれるとして、この三〇年(一九九〇年代—二〇一〇年代)で特筆すべきことは「様式の無国籍化」と「白い(無地の)器の席捲」であり、そうした動向のさきがけが黒田泰蔵、継承したのがいわゆる生活工芸派の作家たち(赤木明登、安藤雅信、内田鋼一、辻和美、三谷龍二)です(いまはその時代はすぎつつあり、古典回帰や絵皿的器など、特筆すべきとはいいがたい、懐古趣味的、美術工芸的様式が多見されます)。

大谷さんの器は「黒田—生活工芸」の系譜上にありますが、大きなちがいは「手のあと」の有無です。黒田さんも生活工芸派の器にも、手仕事の結果としての「ゆらぎ」があり、それが現代の器作家がそうじてむきあわざるをえない工業製品の食器との差違であり価値になります(黒田—生活工芸の場合はかなり「ひかえめ」ですが)。大谷さんはそうした「ゆらぎ」にたいして禁欲的です。黒田—生活工芸と大谷さんの差違とは、つまり、前者が(ひかえめとはいえ)手工芸的手工芸なのにたいして、後者は工業製品的手工芸であることです(しかも作家主義的でありつつ)。

大谷さんのように自覚的に、懐古趣味におちいらずに「生活工芸以後」を生きている器作家は多くないと思います。今回の作家論(大谷さんはなにをやろうとしているのか)を、そのひとりである木工家の富井貴志さん(一九七六年生れ)にお願いしました。S





20190303

熊本は雨でした。「バブルラップ」展の最終日(於現代美術館/本日20時まで)、村上隆さんとの対談終りました。みなさんありがとうございました。坂田さんの話ができてよかったです(バブルラップ展については『工芸青花』12号で記事にします)。これから岡山、明日は多治見です。(菅野)





20190302

『工芸青花』の新刊11号、販売はじめました(会員のみなさんには2月25日にゆうメールで発送しました)。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika011.html
……
3月末(予定)までに青花の会に御入会いただいた方には『工芸青花』11号よりお届けします。
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=4
……
『工芸青花』11号
□2019年2月25日刊
□A4判|麻布張り上製本|見返し和紙(楮紙)
□カラー192頁|望月通陽の型染絵を貼付したページあり
□限定1200部|12,000円+税
□御購入はこちらから
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=273
……
Kogei Seika vol.11
□Published in 2019 by Shinchosha, Tokyo
□A4 in size, linen cloth coverd book with endpaper made of Japanese paper (kozo)
□192 Colour Plates, Frontispiece with a stencil dyed art work by Michiaki Mochizuki
□Limited edition of 1200
□12,000 yen (excluding tax)
□To purchase please click
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=273
……
以下、目次です。よろしくお願いします。(菅野)
……
1|山茶碗
石のようなもの─秦秀雄/勝見充男
最初の古美術品/高木孝
ざらざらしたもの/小澤實
山茶碗入門/清水喜守
深シ奥 枯レツレバ─柳宗悦/白土慎太郎
茶道具として─北村謹次郎/木村宗慎
……
2|欧州タイル紀行
アヴィニョン・教皇・ナポリ/金沢百枝
……
3|大谷哲也 「生活工芸」以後の器
丸裸と白 富井貴志
……
4|川瀬敏郎 籠にいける
消えた色気 片柳草生
……
5|骨董と私
藤末鎌初 杉村理
……
6|ロベール・クートラスをめぐる断章群5
髑髏の闇から抜け出て 堀江敏幸
……
7|名物とはなにか
「名物」批判にこたえる 木村宗慎
……
扉の絵
精華抄




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