
6 西洋のノコギリと定規

残暑の厳しかった昨年の9月、私たちの主催する骨董の市場(集芳会)に、蒐集家が所蔵していた坂田さんの品(数十点)が出品されました。それらの多くには古道具坂田の領収書や納品書、手紙やメモ類、掲載誌が添っており、坂田さんが扱った品と明確に判るもので、競りは大いに加熱し、次々と高値で買い落とされていきました。
ここに紹介する2点は、その折に私が買い落とした品で、これも坂田さんで買った品とのことでしたが、それを証明するメモも領収書もありませんので、他の品(証明できる品)に比べれば安価で入手することができました。もっとも、あまり切れそうにない古びたノコギリと、インチ目盛と思われる折りたたみ定規ですので、飾り映えもしませんし、あまり役に立ちそうにもありません。私はその辺が坂田さんらしいセレクトと思うのですが、この手の品を、坂田さんが「これ」と選ぶ際の(琴線に触れる)基準みたいなものが、多分あったと思うのですが、坂田さんが亡くなった今となっては、それぞれの方が思いめぐらす「坂田イズム」以外に、それを推しはかる術はありません。
骨董の市場で競り落とされる、坂田さんが扱った品と、坂田さんが扱いそうな品とでは、今では価格に大きな差が出ています。坂田さんが扱い、かつての『工芸青花』に掲載されている味の良い(モダンアート然とした)ブリキ板は、一昨年の集芳会で100万円を軽々と超す高値で競り落とされています。その後、同じようなブリキ板が知人の市場に出品されました。件の坂田ブランドに負けぬ(坂田さんが扱いそうな)味わいのある板でしたが、買い落とされた値は、ブリキ板にしてはやや高い程度でした。これは当たり前のことなのですが、骨董の値段とは不思議ですね。
「坂田さんが扱った品と、坂田さんが扱いそうな品とでは、今では価格に大きな差が出ています」と書きました。それはナゼなのか、私は骨董屋ですので、自分なりにその応えを持っています。『工芸青花』や坂田ファンの方には、気になる課題でもあるでしょう。
詳しくは来月、このブログで……。



*この連載は、高木孝さん監修、青花の会が運営する骨董通販サイト「seikanet」の関連企画です
https://store.kogei-seika.jp/
