
9 常滑中壺 鎌倉時代 秦秀雄旧蔵

掲載の常滑壺は、珍品堂秦秀雄の旧蔵で、氏の著書『珍品堂 骨董の旅』に掲載されています。私が骨董を知ることになったのは、20歳の時、福井のアンフォルメル画家小野忠弘氏を訪ねた折に、氏から秦秀雄の新著『骨董入門』をもらい、読んだのがきっかけでした。それ以来、秦秀雄の著書は出版される度に入手しては読んでいました(もっとも、当時の新潟では入手できる本も、新刊の情報もほとんど受け取ることはできませんでした)。秦秀雄の著書こそが骨董蒐集のバイブル(指針)で、そこで紹介されている様な品を、近在の骨董屋で探し出し入手することが蒐集の全てでした。
氏の著書で紹介されている、そば猪口や古伊万里、氷コップやランプ、民藝等は、新潟の骨董屋でも見つけることはできたのですが、上代中世の壺はまったく見つけることができず、ずっと憧れの存在でした。「これは」と思い、買った壺は、昭和の消し壺でした(この顚末は以前のブログ「花と器と 78」に書きました)。当時、新潟近在の骨董屋では、古窯の壺を扱う業者はごく限られていたのでしょう。
秦秀雄がその魅力を熱く語る上代中世の壺ですが、現物に触れる機会がなく、実態が摑めぬまま数年が過ぎた頃、ようやく、釉の剝げた大割れの常滑経塚壺を入手できた経験があります。初心者時代に感じた、上代中世の古壺に対する憧れと飢餓感は、時を経ても抜けぬ様で、それらが市場に現れれば手に取ります。掲載の壺も昨年、市場で入手したものです。
私が秦秀雄の著書『骨董入門』を開いてから五十余年が経ちました。この壺を入手でき、ようやくひとつの思いが叶った充足を感じています。
*この連載は、高木孝さん監修、青花の会が運営する骨董通販サイト「seikanet」の関連企画です
https://store.kogei-seika.jp/
