
10 経塚発掘和鏡(梅花双鳥鏡)

欠損のある小さな和鏡ですが、表面の荒れは少なく、文様はよく残ります。浅いレリーフにもかかわらず、ここまで文様の残る例は少なく、貴重です。裏に粗い線刻があり、よく見れば公達の姿を彫っているようです。〝経塚″発掘でしょう。
〝経塚″は、仏法の滅びつつある、末法と呼ばれた現世(平安末期)から、弥勒の再来する来世に経を残すための行為(経を埋めて保存する、経典のタイムカプセル)です。末法の思想は浄土信仰(思想)と結びつき、作善(現世で仏に功徳を積む善い行ないをすること)によって極楽往生(死後、阿弥陀如来の住む極楽浄土に再び生まれかわること)が叶うと信じられ、公家貴族を中心に日本各地で盛んに作善(仏法護持)のための〝経塚″が築かれました。経塚には、埋納する経典とともに密教法具や鏡、掛仏等が納められました。
この和鏡も、埋納に参加した公達(若き公家)が、儀式の合間に自身の姿を小さな鏡に刻み、経巻に添えて埋納したものかも知れません。末法の世を生きた若者はどのような一生を送ったのでしょう。

*この連載は、高木孝さん監修、青花の会が運営する骨董通販サイト「seikanet」の関連企画です
https://store.kogei-seika.jp/
