染色家の望月通陽さんは、手と詩をひとつに、職人と文人の二生を生きるような、当世ではおそらく稀有な厚みをもつ作家です。新潮社 soko 入口の旗は望月さんの型染。『工芸青花』の扉絵もそうです。染色文化の衰退を自覚しつつも、その淵で日々開拓者であろうとする人。今展では、古典との対話から生れた新作約30点を展観します(販売あり)。


会期|2026年11月23日(月祝)-12月7日(月)
   *11月23・24日は⻘花会員限定
休廊|11月30日
時間|12-18時
会場|青花室|東京都新宿区矢来町71 新潮社 soko3F(神楽坂)


講座|望月通陽+時里二郎|詩と絵
日時|11月25日(水)18時半-20時
会場|青花室




望月通陽 MOCHIZUKI Michiaki
造形作家。1953年静岡市生れ。染色、陶芸、ガラス絵、紙版画、リトグラフ、木彫、ブロンズなどの多様な手法を用いて独自の作品世界を築いている。『宮本輝全集』(全14巻)など装幀を手がけ、1995年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。光文社古典新訳文庫の表紙画など、絵本や挿絵の仕事も多数。画文集『道に降りた散歩家』で2001年ボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞受賞。作品集に『円周の羊』『Mの辞典』など。




木蔭の青花室   望月通陽


日記帳には人の悪口は書かない。天罰がこわいのである。旅の行き先もなく、悩める恋もない。そんな平坦な日常から逃れるための甘美な願望を、幾夜か日記の余白に記したものだが、可憐なその反乱もいつの間にか日常に消えた。そして日記を埋めるのは、今はただ仕事のこと。私には他に書くべき日々の模様が何もない。荘子も蕪村も芭蕉でさえも、おおむねそんな風であったろう。彼等は退屈だった。そのくせとことん充実していた。まさに賢者の退屈。杜甫も王維も蘇東坡も、飄然と雲を肴に酒を酌み、日々の退屈を生きがいとした。李白一斗詩百篇なのである。
 さて私はと言えば、剣の護法童子のように空から空へと駆けまわり、今もひとつの森を駆け抜けてきた。こんなに退屈から逃げまわり、避け続け、一体どんな充実の詩の一篇が書けるというのだろう。木蔭には眠たそうに緑がうずくまる。そこで息を吐くことからまた始めようと思う。









1|望月通陽《尋隠者不遇》 2026年 型染 90×45cm ed.3
2|望月通陽《藍褸(らんる)》 2026年 筒描 91.8×45.8cm
3|望月通陽《空の浅瀬に》 ブロンズ 高33cm ed.2/6
4|望月通陽《僧推月下門》 2026年 型染 90×45cm ed.3
5|望月通陽《花裏逢君醉一廻》 2026年 筒描 87.8×57.8cm
6|望月通陽《蔭》 ブロンズ 高34.3cm ed.3/10
トップへ戻る ▲