こんにちはー。いよいよ3月1日から骨董通販サイト「seikanet」が始まります。栗八も出品させていただいています。ぜひアクセスしてみてください。

さて、「seikanet」のスタートと同時に、工芸青花HPで、蒐集初心者むけに骨董入門の手引きとなるようなコラムを連載して欲しいと、編集長(菅野さん)より頼まれていました。古美術・骨董に興味をもってくださる皆さんへ、骨董とのかかわりが少々長い一先輩として書かせていただこうと思っています。基本的には月に2回、「seikanet」更新と同時に掲載予定です。seikanet の出品共々、「骨董入門」コラムにもアクセスいただければうれしいです。

■ゼロからの骨董入門
タイトルを「ゼロからの」とさせていただきましたが、骨董蒐集の場合は、古いモノや古い文化に興味をもっていただいた時点ですでにゼロでは無く、限りなく満点に近い状態です。そこから説明させていただきます。

例えばですが、「ゼロからのスマホ入門」。アプリのインストール方法、ラインや Wi-Fi の設定等、スマホを楽しむ基本操作を覚えないことには何も先に進めないのが現状ですので、知識ゼロの段階では、まったくお手上げです。よって「ゼロからのスマホ入門」は役に立ちます。

ところが古美術・骨董の場合は、知識ゼロの段階でも、買う気とお金があれば購入は簡単に出来ます。さらに購入を続ければ、それはもう立派に蒐集です。極論ですが、コンビニでお昼のお弁当を選んで買うことと同じです。「ゼロからのコンビニ弁当入門」はあまり役立ちません。

でも、それはやはり極論で、古美術・骨董と云うと何か特別な知識と操作(心構え)が必要な気がしますね。私もそう思います(アレ?)。では、蒐集に必要な特別な知識と操作(心構え)とは何なのか、項を改めて書かせていただきます。

■特別な知識
「この高台脇の削りが云々」「このマダラはヤマセ独特のツチアジで云々」「ユウのカタサがホンカに比べ云々」「初期と言うより、アイクタの手だろう云々」──ベテラン蒐集家からは、何やらワケの判らぬ専門用語がドンドン飛び出し、見るもの、聞くものを雄弁に語ってくれたりします。そんな光景を見ると、骨董品を前にして何も知らない(語れない)自分では、とても入り込めない世界のように感じられることと思います。この段階で、ほとんどの方が相当に怯んでしまわれることでしょう。

しかし、まったくの杞憂(とり越し苦労)です。知識(言葉)は骨董を楽しんでいるうちに自然と身につくものです。古伊万里を中心に蒐集されている方は、明暦・寛文、元文・宝暦、文化・文政などの江戸時代の年号が、知らぬ間に知識として入っています。私などは伊万里がダメですので、いまだに「初期伊万里」と「古伊万里」です。あとはサッパリ分かりませんが、好みの伊万里の仕入れに何の不便もありません。

古美術・骨董は、時代の生んだ文化遺産そのものですので、当然に、そこには専門的な言葉(知識)がついてきます。専門的な言葉(知識)を覚えられば蒐集は当然ラクになるのですが、専門的な言葉(知識)とは、モノと言葉とが一体になって初めて蒐集に活かされる事柄です。言葉(知識)だけが先走っても、何の役にも立ちません。長くなりました。項を改めます。

■心構え
言葉や知識よりも、もっと大切なこと。それは「モノを見る力」です。「眼力」と申し上げてよいでしょう。モノ(古美術・骨董)を楽しむ基本はそれに尽きます。買ったモノは見ないでそのまま大切に仕舞い込み、あとは値の上るのをじっくり待っている、なんて方も一部には存在するのですが、蒐集家とは呼ばれません。「陶器蒐集家」と云うより「投機蒐集家」ですね。

食の器でも花器でも、仏像、掛け軸でもすべて使う楽しみ、見る楽しみです。例えば花器を選ぶ場合です。好みの花を活けて楽しむのに相応しく、飽きのこない、使い勝手の良い器(骨董)を数あるモノ(花器)の中から選び出すのが「眼の力」です。壺や掛け軸、絵画、仏像などでも同様です。自分の空間にどう溶け込み、どのように付き合うか……。緊張感のある空間を求めるのか、和みの場とするのか。置かれるモノひとつで、空間はまったく違った表情を見せてくれます。あなた自身の求める空間に相応しいモノを選び抜く「眼の力」が、まず何よりも大切な要素(心構え)と思います。

では、そのようなご自身の「眼の力」を、どのようにしたらもてるのか。

長くなりました。続きは次回に。


上|神護寺経帙蝶金具 平安時代 幅5.6cm

鳥羽上皇勅願の後、後白河法皇の文治元年(1185年)に神護寺に寄進されたと伝わる紺紙金泥の一切経(神護寺経)約10巻ずつを包んでいた経帙(きょうちつ)の紐と上隅に取り付けられていた銅製鍍金の飾り金具で、1枚の経帙には本来4枚の蝶金具が取り付けられていました。写経巻を包む経帙は古くよりあるのですが、このような優美な蝶金具の付く例は、神護寺の経帙以外に知りません。
いずれの時代かに経帙より外れた蝶金具ですが、鏨(たがね)による繊細な羽の表現(筋彫り)や爽やかとも云える鍍金の美しい輝きが数寄者を魅了し、いつの時代にも愛玩され、今日まで大切に残されてきました。


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