前回のおさらい、要点のみ箇条書きにします。

・入札する前に出品者をチェック(極力、その品を専門に扱うプロの出品者を選ぶ。評価内容や自己紹介欄もしっかりチェック)
・1点への入札は3回まで(掘り出しモノは狙わない)

こんなところです。当たり前の事柄ですが、これを実行するのはなかなか難しいのです。実際にオークションに参加されているベテランの皆さんも同感と思います。

さて後篇は、ヤフオクで学ぶ骨董蒐集です。骨董を買おうとする時、迷うことがあります。特に初心者の方はヤフオクでも迷う品が多いことでしょう。魅力的に見えるし、購入もしてみたい。でも……と迷い、入札をためらう初心者の方も多いと思います。迷う理由は様々でしょうが、主には、相手がよく分からないし、本物かどうか良く分からない。価格(相場)が良く分からない。と云った迷いですね、解決策はあります。

■相手が分からない(見えない)から心配
見えない相手を不安に思うのは当然です。ネットだから見えないのは当たり前と思っている落札(入札)者はいないでしょう。見えないことを幸いと思っている出品者はいます。見えないからこそ、出品者は見せる努力を怠ってはいけないと思います。ネットでも「見える」ようにすることは可能と思います。あえてそれをしない出品者は、怠慢か、その方が都合が良いからかも知れません。

「見えない」出品者の品は、極力入札を控えてください。事情があり家族(先代)の蒐集品を処分します、某家よりコレクションの整理を頼まれ代理で出品しています、等のフレーズ(解説)は、相手に自分の存在が見えぬことを利用した、姑息な誘い文句かも知れません。見えない相手(出品者)の場合は、軽はずみな入札は控えた方が無難です。

■本物かどうか分からない
前にもこのブログで取り上げさせていただきました。今更と思う方も多いと思いますが、何度も書かせていただきます。いつもの極論です。本物かどうかなんて些細な問題です。ホンモノかニセモノか判らなければ、買わない方が良いのです。「ホンモノだったら……」と思って入札する品のほとんどは、たぶんニセモノです。あるいは、届いてみればあなたにとって不要の品の場合が多いです。骨董蒐集の醍醐味(本質)は、本物を買うと云うだけの、次元の低い楽しみではありません。

数ある本物の中からいかに自分好みの品を見つけだすか。それぞれの蒐集家が好みで選び、購入した品の集積こそがコレクションです。骨董は何も語りませんが、コレクションは蒐集家の姿勢(好み)を雄弁に語ってくれます。

前章に書かせていただいた、事情があり家族(先代)の蒐集品を処分……と云うフレーズをなぜ不審に思ってしまうかと云うと、出品されている品々に、蒐集家の個性と愛情(情熱)が感じられないからです。コレクションとはどのような場合でも、たとえ贋物ばかりのコレクションでも、それを蒐集した方の個性と愛情(情熱)が感じられるものです。

今のあなたが持てる知識を総動員し、画像や解説からでも本物と判る品のみに入札してください。そうすれば、後悔は生まれません。

■幾らまで買って(入札して)良いか分からない
ヤフオクの品に限らず、骨董の相場ほどお答えに困る質問はありません。骨董は同一商品が多数存在する分野ではありませんので、状態や作(景色や姿)のわずかな違いが大きく価格を変えてしまいます。Aさんにとっては「千金を投じても欲しい品」であっても、Bさんには「もらっても困る品」であったりするのが骨董品です。相場と云う、金額以前の命題を、骨董の全ては背負っていることになります。

しかし現実に、骨董品は価格を伴って売買されています。それは「その価格なら欲しい」と思う方があって初めて成立する売買です。つまり「大名品を1000円で」といくら提示したところで、購入希望者がなければ価格価値そのものが成り立たないと云えます。何やら難しい話になりました、すいません。

ヤフオクの優れている機能のひとつが「自動入札機能」と思います。「この金額なら欲しい」と、現在価格を大きく超える金額で入札しても、他にあなた以上の金額で購入を希望する入札者がいなければ、現状の表示価格からわずかな加算金額で購入(落札)可能となります。もしあなたが思い切って入札した金額を超えた入札があった場合は、あなた以上にその品の価値を認める方がいたと云う結果ですので、潔く諦めてください。その落札金額を、今後の入札時の参考にしてもらえればと思います。

■ノークレーム・ノーリターン
「ノークレーム・ノーリターン」は、ヤフオクの骨董関係で使われ始めた言葉かも知れません。「ノークレーム・ノーリターン」にクレームをつけている方を評価欄で見たことがありますが、無駄でしょう。

「分からないことがあれば事前に質問を……」。そのとおりと思います。「こちらは素人で良く分かりません。入札は自己責任で……」。これも然りです。解説で「あやふやな品で、あやふやな出品者です」と言っているにも関わらず、落札してから「あーだこーだ」と言う方は、きっと、「もしかしたら……」とご自身が勝手に想って入札した場合が多いのではないでしょうか。手許に届いてみれば「やっぱり……」な訳です。自身の甘い判断を棚に上げて、「ノークレーム・ノーリターン」と書いてある出品者を非難するのは、どう見ても間違っているように思います。疵や共直しの解説がないのにそのような品が届いた場合は例外でしょうが、それ以外の「もしかして……」「ホンモノだったら……」の思惑で入札し、「なんだ……」とガッカリした場合は、どうか潔く諦めてください。要はそのような出品者から、2度と高値で購入しないで済んだ授業料、と思えば良い訳です。

■入札取消し
「ヤフオク初心者ですが、せっかく入札しても、終了間際に(出品者によって)勝手に入札が取り消されることがあります。何とかならないのですか?」と云った趣旨のお便りが青花ネットに寄せられました。ヤフオクに代わってお応えします。

まったくアタマにきますね。もうすぐ落札と云う終了間際にあなたの入札が取り消され、出品取消し。「だったら(安く買われるのかイヤなら)出品を止めるか、最初から売りたい価格で出品しろ」と思いますね。同感です。

で、この取消しを行なう出品者は意外と多いのが現状です。「売りたい。でも安いのはイヤだ……」で、苦肉の策として取消し作業をしているのでしょう。中には同じ品を何度も出品し、繰り返し取消しをしている猛者もいます。この、ヤフオクの悪弊とも云えるシステム、「何とかならないか」と思っている入札者の方も多いでしょう。結論から云えば、現状では何ともなりません。

入札取消し、出品取消しのシステムは、偽ブランド品や出品禁止品を間違って出品してしまった場合に、出品者が自主的に出品を取り下げることを想定して設けられたシステムと思われます。膨大な数の出品の正否をヤフオクが全て把握することは不可能ですので、不特定多数の出品者に開かれたヤフオクでは必要不可欠なシステムとも云えます。その様な目的で設けられたシステムの乱用なのですが、使い道は出品者に委ねられていますので、致し方ありません。それがヤフオクの現状です。

安く落札されるのを避けるために取消しシステムを使う出品者と判ったら、以降はその出品者とは関わらないことです。たとえ魅力的な品が出品されていて、がんばって入札しても、買える(落札できる)保証はありませんから……。

■最後に
ヤフオクは年々システムに改良が加えられ、現在は詐欺まがいの出品者からの落札に関しては、様々な対処法が提供されており、健全なネットオークションの場として、どなたでも広く楽しめる工夫がされています。しかし、どなたにとっても完璧な出品者は存在しませんし、予想できぬ様々なトラブルは、kurihati88 の出品でも起きています。ヤフオクと云う骨董市場の利便性を最大限に利用し、トラブルが起きても寛容に対応することができたなら、ヤフオクは蒐集家にとって、気軽に骨董と触れることのできる得がたい場となってくれます。


山田寺古瓦 白鳳時代 13.5×14.5cm(軒丸瓦)/幅27.5cm(軒平瓦)

「瓦礫(がれき)」と云う言葉があります。辞書には「つまらぬもの。値打ちのないもの」と出てきます。瓦の欠片はつまらぬもの、値打ちのないものの代表と云うことですね。掲出の瓦は、かつて奈良桜井(山田)にあった古代寺院(山田寺)跡より出土したと伝えられる、創建寺(白鳳時代)の古瓦です。山田寺を検索してみると、蘇我氏や中臣鎌足、天智天皇、天武天皇等の名が連なります。我が国の黎明期における重要な人物たちと深い関わりのある寺であった訳です。その寺の往時の姿をしのぶ遺物は、興福寺に保管されている大きな金銅の仏頭残欠と、発掘されたこれらの瓦片、寺の壁面を飾っていたと思われる塼仏片以外にはありません。壮観であったと思われる山田寺ですが、まさに瓦礫だけが残された訳です。

そんな瓦礫に美と価値を見出し、慈しみ、大切に蒐集してきた先人たちがいます。私たちは今、その道の上を歩んでいます。先人によって遺された品々を慈しむ心には、貧富貴賤の差はありません。「雑草と云う草はない」。遍く尊び、慈しむ。それが骨董蒐集の王道と私は思います。

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