こんにちはー。骨董通販サイト seikanet に多くの皆さんからアクセスいただけてうれしいです。出店者も増えてきました。栗八も出品させていただいています。ぜひアクセスしてみてください。

先回に引き続き「目利きへの道」について、思うことを書かせてもらいます。古美術・骨董にかかわってきた時間が皆さんより少々長い、一先輩の弁としてご一読いただければ何よりです。

■はじめに
さて、あなたの持っているモノの正確な名前が分りました。そのモノの作られた時代のことも、当然少しは理解されたことでしょう。ただの「伊万里の皿」だったのが「後期伊万里染付雪輪文なます皿/江戸後期」と言える成長です。一寸が何センチかも分ったことと思います。次に「その皿」より「好きな(欲しい)モノ」もすでに雑誌や図録で探されたことでしょう。あとは覚悟を決めてそれをひたすら探すだけ、ここまでが先週の内容でした。数寄者(目利き)への道はその繰り返しがすべてと書かせていただきました。「そのとおり」と納得された方はもうすでにベテランの蒐集家の方と思います。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。初心者の方には「何だか本質に迫っていないような……」とか「イマイチピンとこない内容」だったと思います。皆さんがもっと知りたい(気になる)事がらは古美術・骨董の価値(価格)が分ることですよね。前置きが長くなりました。本題に入ります。

■価値(価格)がワカル
価値(価格)がワカル、それこそが目利き。要は「オープンザプライス」の的中率が上がることですよね。メディアの影響力は強く、お宝(古美術骨董)の価格がワカル人を目利きと、いつの間にか勘違いされる方が増えてきました。そのような方は「目利き」と云うより「値利き」です。

誤解しないでください。値利きをバカにしている訳ではありません。値がワカル(納得できる値を付けられる)方は、そのジャンルの中でも相当な目利きに限られるのですから、値利きの出来る方とはすでに目利き以上の存在なのです。そのジャンルに詳しい目利きたちも納得する価格を付ける。そんな芸当は、前回、名前の分らぬ「伊万里の皿」から卒業したばかりの私たちに出来るわけがないじゃないですか。古美術骨董の値段なんかサッパリ分らなくても当然です。目利き道に何の障害にもなりません。どうかご安心ください。しかし……

■そう、しかしです
実際に古美術骨董は売られています。「目利き」と云えども、買ってこないことにはいつまでたっても優れたコレクターにはなれませんよね。買いもせぬ骨董評論家では面白くないものです。そう、買う時の値段が適正かどうか? が分れば安心ですね。

その前に、ここで質問です。「なんでも鑑定団」にあなたがお気に入りの伊万里の皿を出品しました。あなたの買値は1万円です。でも、何だかもうちょっと価値がありそうと思い、つけた希望鑑定額は3万円にしました。さてオープンザプライスです。何と10倍の30万円! 番組放映後、そのお皿を「30万円で買いたい」と云う人が登場します。あなたなら売りますか? たぶん、このページをここまで熱心に読んでくださったほとんどの方は「NO!(とんでもない)」でしょう。ますます伊万里の皿が愛しくなり、愛着も今まで以上にわくことでしょう。中島先生ならその皿がなぜ3万円ではなく30万円なのかを的確に説明してくれることと思います。

では、逆の場合です。オープンザプライスが1万円。ガッカリですか? それともヤッパリと納得ですか? もちろん、これもほとんどの方が納得でしょう。中島先生なら「大いに使って楽しんでください」と言われると思います。そのとおりですよね。

古美術骨董の価値(価格)について、聡明な方はもう気がつかれたと思います。買ってしまった好きなモノは、もう価格の世界とは別の次元の愛蔵品となっています。1万円で売られていた伊万里の皿を、それだけの代価を払って買えたと云うことは、その皿に1万円払っても良いと云う価値をあなた自身が見つけた証拠なのです。ちょっと分ってきましたか?

1万円を出して伊万里のお皿を買えたあなたは、1万円の古美術骨董の世界(価値)を実はもう理解しています。数十万、数百万円もする古美術骨董の世界(価値)を今のあなたが「サッパリ分らない」のも当然なのです。今のあなたは1万円の古美術骨董の目利きになれただけです。古美術骨董に100万円を出せる人は100万円までの目利きになり、10万円なら10万円までの古美術骨董品の目利きとなれます。

何だかちょっとサビシイ……ですか? ここで落ち込むようでは困ります。狙った獲物は確実に仕留める情熱がなければ優秀な骨董ハンター(蒐集家)にはなれませんよ。さて、いよいよ問題解決の最終章です。

■目利きとは
数百万、数十万円を古美術品にポンと使える人はそうはいません。ほとんどの蒐集家の方は毎月のお小遣いの範囲です。10万円と云えば大金です。お金持ちがお金さえ出せば良いものは買えてしまうと単純に考え、羨ましく思ってしまう方もおられるでしょう。大きな間違いです。

笑える悲しい例です。以前にテレビで某有名占い師の自宅が放映されました。「この軸はン百万円」「この壺はン百万円」と次々に飾られている古美術品や絵画の購入価格を言われるのですが、私の目から見るとどうやら騙されているようです……。私の専門とする仏教美術や古陶ではないのですが、輸出用古伊万里を真似たような大きくて妙に派手な壺や安っぽい表具の掛け軸がおおよそいくら位するのかは、プロですから分ります。占いでは目利きかも知れませんが、古美術骨董はどうやら目の利かぬ方のようでした……。きっと高い価格に酔って(由って)、良いモノ(価値のあるモノ)と勝手に勘違いされて購入されたのでしょうね(悲喜劇です)。

ねっ、お金がただあっても価値のある古美術骨董は買えません。お金の嵩が目利きの基準を上げることではないのです。1万円なら1万円世界の目利きになることが大切です。そして、今お持ちの好きな品より「もっと好きになれる品」を探し出してくることです。見つからないとしたら骨董ハンター(蒐集家)としては怠慢です。大いにネットや催事、古美術店を訪ねてみてください。

運良く出合えた「好きになれる品」は、きっと1万円より高いでしょう。おおいに迷ってください。それは、あなたが1万円目利きの峠を越えるかどうかの分かれ道なのですから……。


上|伝世初期伊万里沢瀉図大皿 江戸時代 径34.3cm

山水図の多い初期伊万里大皿にあって、珍しい沢瀉(おもだか)図です。大胆でラフな筆使いは唐津陶工の血脈が感じられるようでうれしくなります。よく見ると沢瀉の下には花籠がかわいく描かれています。花籠図は当時請来されていた中国の皿(明染付)や江戸中期以降の古伊万里には盛んに描かれていますが、伝世初期伊万里では数も少なく、この大皿も新発見と云える1枚です。小さな花籠に巨大な沢瀉とは、つくづく大胆で大らかな構図です。磁器の焼成にようやく成功し、新たな世界へと踏み込んだ伊万里陶工たちの熱い思いや勢いがこの大皿にもしっかりと残されている気がします。


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