撮影|森岡督行

6月3日(月) 晴

12時、神保町のミロンガにて会談の予定だったが、神保町に向かっている途中、ミロンガが満席だという知らせがあり、場所を51% 五割一分に変更する。港区内で進行している開発において、もし新しいセレクトショップをつくるならをテーマに意見を交換。15時30分、銀座の店舗に戻り、山中とみこさんの搬入を行う。


6月4日(火) 晴

午前、店舗近所のひねりやにて北京の鈴木商店のネーネーさんとジュディさん、山中とみこさんと来年2月に鈴木商店で行われるトークイベントの打ち合わせを行う。お茶代を自分が支払おうとして、伝票を持とうとしたら、ネーネーさんが先にそれを取りレジで支払いをしてくださった。自分はそれを止めようとしたが、ネーネーさんは「私が支払います」と言う。夕方、赤坂に移動。会津料理の鶴我にて会食。


6月5日(水) 曇

午前、表参道へ。三菱UFJ銀行青山支店にて新規融資の相談。「社長」と呼ばれることはときどきあるが、今回は、同席した行員の方に「社長様」と呼ばれる。14時、銀座に移動して月光荘サロン 月のはなれへ。日比康造さんと『人生で大切なことは月光荘おじさんから学んだ』出版記念イベントの打ち合わせを行う。17時、馬喰町のアガタ竹澤ビルへ。3階の坂本図書室にて伊藤総研さんと合流。坂本龍一さんの蔵書を拝見する。その後、イーグルビル1階にあるBridgeに移動し、アイスコーヒーを飲みながら、『本本堂未刊行図書目録』に掲載されている本をこれから出版できないかという話をする。もちろん坂本龍一さんの同意があってのことだが。


6月6日(木) 晴

朝、ロバート・キャンベル先生から、今日の午後店舗にいらっしゃいますかという連絡が入る。紹介したい人がいるとのこと。しかし私は午後に品川のコクヨ本社にて講演がある。キャンベル先生にそのことを伝えると、然るべき代理を立ててほしい、とのこと。然るべき代理といったら役員だろう。遠山さんはおそらく時間の隙間がない。キャンベル先生と親交のあるTakramの渡邊廣太郎さんに連絡したがつながらない。吉田知哉さん、森住理海さんもつながらない。このやり取りを品川への移動の山手線の中で行っていたが、山手線の動画の広告にちょうどキャンベル先生が出てきたので、写真を撮り、キャンベル先生に送る。森住さんに来てもらうことになる。銀座の店舗に訪ねてきてくれたのは、高級ブランド、グッチのディレクターの方々だった。品川のコクヨ本社では、コクヨをはじめ様々な企業の方々が、五つのグループに分かれて、それぞれのテーブルで、もし森岡書店で1冊の本を売るならをテーマにディスカッションも行う。その結果、九鬼周造の『「いき」の構造』を扱うイベントが企画された。来年の2月あたりに実現したい。


6月7日(金) 雨

17時、神楽坂駅で白洲千代子さんと合流し『工芸青花』の骨董祭へ。16世紀オランダのカップを求める。その後、グラフィックデザイナーの鎌田充浩さんと会場で会い、一緒にりゅうほうにてラーメンをいただく。


6月8日(土) 雨

11時、山形駅でカメラマンのキッチンミノルさんと合流し、文翔館へ。文翔館の中庭で『AERA』の現代の肖像の撮影をしてもらう。東北芸術工科大学に移動し、「山形県内の名建築ガイドブックをつくる市民参加プログラム」の説明会を行う。宮本武典さんと私が登壇。日本にインバウンドで来ている方々の1パーセントしか東北に旅行をしていないらしく、その観点からも東北の観光の伸びしろがあると考えられる。身近な建築に目を向けること、有名な建築家の作品を改めて見直すこと、それを参加者と共有し、1冊の本にまとめたい。


6月10日(月) 雨

午前、銀座の店舗へ。山形からいとこの荒木俊雄さんが来店。先日の西川町議員選挙に当選したということで、なだ万のお弁当でお祝いをする。午後、飛松隆弘さん、小駒眞弓さん夫妻が搬入に訪れる。U'U'の小駒眞弓さんによる3回目の展覧会。今回も宮沢賢治の『ポラーノの広場』(新潮文庫)の販売とレリーフタイル作品をメインとした内容。小駒さんは『ポラーノの広場』に収録されている『十力の金剛石』の世界観に影響を受けつつ作家活動を始めた。店内で本と作品の関係性をお客様と共有したい。


6月12日(水) 曇

午後、文藝春秋にて中川原信一さんの「あけび籠」展で使う写真のセレクトを行う。写真家の白井亮さんの作品。17時、馬喰町のアガタ竹澤ビルに移動し、『ましこのうた』の企画の相談を行う。19時、曙橋の中華料理店敦煌に移動し、森岡書店定例会を行う。出版部門のありかたについての相談など。21時、新宿ゴールデン街の「なべさん」に移動し、リクルートの相談をする。カウンター脇にあるDMやチラシの束のなかに写真家の宮崎皓一さんの展覧会の案内があり驚く。宮崎皓一さんの『Scissorings 切抜き』。この写真集はこれまで3度ほど自分の前にあらわれた。宮崎さんとお会いして復刻版をつくらせてほしいと願い出たい。


6月14日(金) 晴

中国の深圳にある書店からトークイベントの依頼を受け、深圳へ。深圳には、成田空港から直行便で行くルートと、香港経由で入るルートがあり、どちらも5時間ほどのフライト。今回は直行便にて。空港から中心部に向かう途中、超高層ビル群に動画が投影され、全体で一つのビジュアルアートになっている光景を見る。中心部のショッピングモール内の書店に到着。「1冊の本を売る書店」のポップアップストアということで葛西薫さんの『KASAI Kaoru 1968』の展示販売会を行う。先日MUJI HOTELが開業したとき、デザインとは何かという問いへの回答がラウンジに展示されていたが、この難しい問いに、葛西薫さんは次のように答えていた。デザインとは、「潤い」であると。では、いったい、葛西薫さんの言う「潤い」とは何だろうか。その具体的な例が、作品としてこの本のなかに掲載されていると思う。葛西さんのデザインは、決して目立つことがなく、むしろ、そっけないくらい。葛西さんは、仕事を始めたときから今日まで、ずっとシンプルなデザインをこころがけてきたように思う。デザインに、「足し算」のデザインとして、より注意をひくよう、たくさんの情報を盛り込んで構成していく方法と、「引き算」のデザインとして、要素を削ぎ落として本質を伝える方法があるなら、もちろん、葛西さんは後者の方。「引き算」のデザインの「佇まい」。手に取ってくださるお客さんとそれを共有できたらと考えた。


6月15日(土) 晴

今日はトークイベントが2回と記者会見が2回の予定。トークイベントではいまの書店の役割が、本の販売はもちろんのこと、人々のコミュニケーションの現場になってきていることを説明する。「デジタルと紙の違い」「Amazonとリアルな書店の違い」などなど、参加者の質問が止まらず、何かアイデアを見つけたいという意欲が伝わってくる。20社以上のメディアとの会見。


6月16日(日) 晴

ホテルから空港へ。帰り際、「親子が絵本の読み聞かせをできるような書店をつくりたかったのです」と書店の方が言う。デジタルの都市にあって、終始、別のアナログのイノベーションを模索している人々の熱意を感じる。5時間のフライトで成田に到着。


6月17日(月) 晴

午後、丸ノ内線の新宿御苑前で降りてキンコーズで生活工芸美術館(仮)のプレゼン資料を出力。それを持参し、また丸ノ内線に乗って丸の内ビルディングへ。某社にて概要を説明させていただく。生活工芸美術館(仮)に関して興味を持ってくれる方がいれば、いつでも説明に行きたい。一方で、生活工芸という言葉が意味すること、その範囲を自分なりに考えている現状もある。


6月18日(火) 雨

15時、銀座のMUJI HOTELのラウンジにて小池さんと8月の企画の打ち合わせをする。その後、市ヶ谷の法政大学に移動し、キャリアデザイン学科の酒井博基先生の講義に登壇させていただく。8年ぶりに訪れた母校だが、ちょうど建築家の大江宏の代表作である58年館が取り壊されている最中。館内にあるベンチに腰掛けて本を読んでいた日々を思い出す。講義の後に、「農業に関心があるのだけれども、すぐに農業を始めるか、一般の農業に関する企業に就職してから始めるかどちらがいいですか」という質問を受ける。迷わず、「すぐに挑戦した方がいい」と答える。長野県のご実家が農業をされているとのこと、例えばりんごを栽培してそれをシードルにし、そのパッケージやボトルのデザインを考えたり……妄想を広げていくだけで楽しい。


6月19日(水) 晴

朝の新幹線で京都駅へ。京都駅で徳武さんと合流し、近鉄特急に乗り換え、大和西大寺駅にて下車。奈良の「秋篠の森 なず菜」にて石村由起子さんとお会いする。車で「くるみの木」へ移動。スタッフの方々が休日だというのに、ペンキを塗っていたり、商品の整理をしていたり、気持ちよく働く姿に胸を打たれる。その後、新しい石村由起子さんのご自宅を訪問。古の光明皇后の薬草園だったというお庭に中村好文さんの建築。3人でワインをいただく。夕食に串揚げをいただき、京都駅までタクシーで向かい、新幹線に乗車。石村さんありがとうございました。


6月20日(木) 曇のち雨

14時、新宿三丁目のらんぶるにて成澤みずきさんと原稿の確認。パソコンの電源が無くなったので、丸井の6階に移動し、エスカレーター付近の椅子に腰掛けながらさらに原稿の進捗を確認する。そこには電源があることを私は知っていた。


6月21日(金) 晴

11時、遠山さんに相談事があり中目黒のスマイルズへ。世界の名画の売却の件、京都市の土地の件などなど。15時、浦和駅に移動し、キッチンミノルさん、吉田知哉さんと合流。伊藤公子さん宅にて、伊藤昊さんの銀座の写真のセレクトを行う。18時、浦安駅に移動。北栄テラスへ。前回自分が登壇させていただいた「コエルハコ」に今回は平井かずみさんが登壇する。平井さんのこれまでのお話をトキイロの近藤義展さんが引き出す。それを聞きながらディナーをいただく。


6月22日(土) 雨

16時30分、表参道へ。川崎徹さんが主催する「本の場所」のトークイベントに登壇させていただく。その前に、謎の人物、狩野さんのご自宅へ通される。某マンションの一室。ドアを開けると、江戸期の名画がずらり。伊藤若冲、曾我蕭白、与謝蕪村、円山応挙、その他狩野派、琳派など隙間なく軸が掛けられている。それを見ながらコーヒーをいただき、狩野さんのこれまでのお話をお聞きする。只者ではない。最後に見せてもらった河鍋暁斎の絵には髑髏の落款があり、この落款がある作品は1点しか確認されていないという。「本の場所」では、これまで取り組んできた仕事を紹介させていただく。川崎さんの奥様の桜井郁子さんと会場でお会いする。終了後に記念撮影をしていると、目の前を糸井重里さん、樋口可南子さん夫妻が車で通り過ぎていった。


6月26日(水) 晴

午後、六本木の喫茶店カファブンナにて中村奈奈さんと来年に行う絵本の出版記念の打ち合わせを行う。その後六本木ヒルズに移動し、モデルの市川紗椰さんのJ-WAVEの番組に出演する。市川さんとは撮影の現場で何度もお会いしているが、直接お話しするのは初めてだった。「本を読まない時代の本屋」「Amazonがある時代の本屋」などがテーマ。深圳のときと話す内容が似ている。その後、麻布十番に移動し、シリアワインの試飲会に参加する。世界中で7パーセントしかない石灰石ベースの畑でつくられたぶどうが原料。


6月27日(木) 晴

昨年公開された映画『マイ・ブックショップ』の監督のイザベル・コイシェさんがご来店くださる。


6月28日(金) 晴

13時、豪徳寺の編集工学研究所にて写真集のセレクトの確認。銀座の店舗に戻り、たなかれいこさんのトークイベントを開催する。長野陽一さんとたなかさんの対談だったが、本をデザインしてくださった有山達也さんが駆けつけてくださったので、急遽、有山さんにも登壇していただく。最近は、たなかれいこさんの「オーガニック黒胡椒入り梅塩」でごはんを食べている。


6月29日(土) 曇のち雨

午後、店舗にてガラス作家の長野史子さんと作品集の打ち合わせを行う。夕方、馬喰町のアガタ竹澤ビルに移動。1階のスペースが新しく生まれ変わった。名前はフォイ。デンマーク語で「種」を意味する。コペンハーゲンのアブサロンに習ったフリースペース。有機農業でつくられた作物を中心にした企画を開催していく。次世代へ引き継ぎ、残していくことの重要性を再認識する場所として。


前の日記へ  次の日記へ

トップへ戻る ▲