昨年(4月)につづき、「ひとり問屋」日野明子さんによる産地展をおこないます。いわゆる「産地」とは、固有の風土、固有の歴史、固有の技術(分業制)を有する手工芸品生産地、ということかと思いますが、ごたぶんにもれず昨今の地球規模化(グローバル化)は「固有」の存続をあやうくする。そんな(基本的には困難な)時代の産地の実状と意義を、おそらくだれよりも産地をよく知る日野さんに教えてもらう、というシリーズです。昨年は4人のベテラン、知られざる(有名ではないけれど腕利きの)職人仕事をまのあたりにしました。今年のテーマは「継続」です。風土と歴史と時代と世代がおりなすかたちを目撃したいと思っています。


会期|2019年9月27日(金)-10月6日(日)
   *9月27日は青花会員と御同伴者のみ
時間|13-19時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31-13 一水寮101(神楽坂)
監修|日野明子


講座|日野明子|産地のつづけかた
日時|9月29日(日)15時-17時
会場|一水寮悠庵
   東京都新宿区横寺町31-13 (神楽坂)
定員|25名
会費|3500円
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=288



日野明子 ひの・あきこ
1967年神奈川県生れ。共立女子大学家政学部生活美術科卒業。大学で、工業デザイナーの故・秋岡芳夫氏に教わるという幸運に恵まれ、モノづくりに興味をもつ。卒業後、ちいさな商社に入り、営業職7年。プロにモノを売る楽しみを知る。 会社の解散をきっかけに1999年 “スタジオ木瓜”の屋号で、卸業、展覧会企画、地場産業のアドバイザーなどを始める。AXIS web magazine「宝玉混沌パズル」では、問屋ならではの視点で、モノづくりに関わることを寄稿している。
https://www.axismag.jp/posts/serial/hinoakiko-puzzle



今展によせて   日野明子


「産地がブーム」と言われていますが、ブームではありません。常に続いています。ですが、「続けることは難しい」と、産地を周り、モノを探すたびに思います。それぞれの土地の事情があり、素材も違い、時代の変化も関わってくるので、続け方はそれぞれです。続ける目的も違います。

土産物として生き残る素材。
時代とともに変化する素材。
時代に淘汰された素材。
その土地にしかなく、ほとんど知られていない素材。

いくつかの素材を、「産地で続ける」というキーワードでつなげました。続け方はそれぞれですが、何か新しいことがみえてくるかもしれません。……と、面倒臭いことを書きましたが、どれもこれも魅力的な生活道具です。わたしが産地にこだわるのは「美しい素材の、美しい手仕事がある」という、単純な理由なのです。この美しさを共有できれば幸いです。以下、出展者を紹介します。

九谷青窯(石川)……1971年に地元の若者が集まって始まった窯元。素人が集まって作った窯元の、李朝に定窯の洒落っ気を加えた独特の九谷焼は、トントン拍子で人の知るところとなりました。時代を経て近年は、新しく入る若者には自分たちのいいと思うものを作らせるという九谷青窯の、今の明るい作風は巷でご覧いただけます。今回は、窯元から初期の名残のある品物を集めてきました。時代の流れを感じ取っていただければ、と思います。

高橋つづら店(茨城)……プラスチックの登場で多くの自然素材の道具がなくなっています。つづらもその一つ。今では日本で2軒を残すのみ。つづら職人とは紙を貼り、カシューで仕上げる人のことを言い、土台となる籠部分は分業で、仕入れていました。高橋諭さんは今後のことを考えて、その両工程をそれぞれ師匠について学び、「ひとり内製化」しています。分業による製作は、ひとつでも工程が欠けるとモノができなくなる。それをギリギリで食い止めている仕事です。

日知舎(山形)……山形に移り住み、山伏でもある成瀬正憲さんは、土地の知恵や産物を地道に足で集めています。そのひとつに「おえ草履」があります。「おえ」とはカヤツリグサ科フトイのこと。筵などの原料として使われるこの素材を、鶴岡では草履にしていることを知り、素材の扱い方、草履の作り方を伝授してもらい、さらに庄内刺し子で鼻緒をつくることにより、新たな息を吹き込みました。同じものを作り続けるだけでなく、必要とされるモノにしていく、進化することも必要と、おえ草履から教えられるのです(品物は予約販売となります)。

米沢研吾(秋田)……桜の皮を使った樺細工。秋田の角館の工芸品です。角館に生まれ育った米沢さんの、品のある樺細工にはハッとするものがあります。「伝統工芸品だから」「その土地ならでは」という言葉に甘えず、「いいものを作ることで次に繋げる」という当たり前のことを、米沢さんの品物から感じ取るのです。















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