会期|2022年3月25日(金)-29日(火)
   *3月25日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31-13 一水寮(神楽坂)
出品|阪上梨恵(赤穂緞通 六月)


講座|工芸と私58|阪上梨恵|赤穂緞通と私
日時|3月25日(金)19時半-21時半
会場|一水寮悠庵
   東京都新宿区横寺町31-13 (神楽坂)
定員|15名
会費|3500円
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=810








阪上梨恵 Rie Sakagami
1983年神戸生まれ。大学で美術史を学び、服飾や産業振興の仕事を経て赤穂緞通に出会う。根来節子氏に師事したのち、2019年に独立。赤穂御崎に工房を構える。新作緞通の制作と古作の収集、再生に取り組み、寺院や博物館収蔵品の修復も手がける。


青の絨緞   阪上梨恵


兵庫県の西の端。瀬戸内に臨み、かつては塩づくりで栄えた赤穂。赤穂緞通はこの海辺の穏やかな町で作られてきた木綿の手織り絨緞です。創始者は幕末から明治の激動の時代を生きた児嶋なかという女性。旅先で見た異国の敷物に魅せられて、26年もの歳月をかけて技法を編み出しました。しかし、彼女の生涯を知る手がかりは殆ど残されていません。

明治から大正にかけての最盛期にはいくつもの緞通場が立ち並び、年間3000枚余りが生産されていたそうです。しかし戦争の影響により綿花の輸入が規制され、昭和初期に多くの織元が廃業。戦後は1軒を残すのみとなりました。最後の織元の灯が消えようとしていた平成3年に織り子の阪口キリヱさんを講師として織方技法講習会が開かれ、技術の保存と伝承のため織り続けられています。

現代の織り手は、かつて分業で行われていた工程を全て一人で行います。糊付けや鋏入れなど、他には無い、独自の、ひたすらに手間のかかる製法を忠実に辿って。なぜ、児嶋なかはこのようにしようと考えたのか。なぜ。糸に糊を揉み込みながら、糸を鋏で切り揃えながら、問いが頭をよぎります。その答えは今や、昔作られた緞通の中にしか見出せないのではないか。私は新作を織る傍らで古作の修復と再生を手掛けるようになりました。汚れを洗い流し、形を整え、染みを抜き、破れは繕い、鋏を入れなおす。昔の緞通に触れながら、彼女の並々ならぬ拘りと情熱を、効率や生産性よりも理想を求めた強さを、そしてそれに応えた織り子の矜恃を思います。

本展では、100年余りの時を経た古作の赤穂緞通を展示します。村の紺屋が染めた素朴で身近な綿糸を用いつつ、多様な世界各地の文様を取り入れ、畳一枚の大きさに織り上げた日本ならではの青い絨緞。一人の女性の、異国への憧れが形となった絨緞を、多くの方にご覧いただけますように。




















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