古道具坂田の坂田和實さん(1945-2022)が昨年11月6日になくなって、もうすぐ1年。青花とはゆかりふかく、つねに道標となる表現者のおひとりでした。あらためて、追慕の意をこめて、10月末と11月末にふたつの展観をおこないます。
 10月は染色家・望月通陽さんの個展です。古道具坂田(1973-2020)でひらかれた26回の企画展のうち、古物以外の展示は望月さんの2回の個展だけでした(1980年と83年。掲載図版の3点目は80年展の案内状)。坂田さんが94年に設立した個人美術館「as it is」のロゴは望月さんの字であり、坂田さんの主著『ひとりよがりのものさし』でも望月作品が紹介されています。望月さんは、as it is を設計した建築家・中村好文さんとともに、坂田さんがもっとも評価し、信頼していた現代作家でした。
 もとより望月さんの思いもふかく、坂田さん追悼の号とした『工芸青花』19号によせられた文章は、慟哭をこらえる歯ぎしりまできこえてきそうな絶唱でした。今展には、同号のために描かれた坂田さんの肖像(以下)や、『工芸青花』の扉絵(染絵)シリーズなど、十数点が出品されます。


会期|2023年10月27日(金)-31日(火)
   *10月27日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)


講座|工芸と私71|高木崇雄|望月通陽と坂田和實
日時|10月27日(金)18-20時
会場|悠庵
   東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)
https://store.kogei-seika.jp/products/lecture-kogei-71







望月通陽 MOCHIZUKI Michiaki
造形作家。1953年静岡市生れ。染色、陶芸、ガラス絵、紙版画、リトグラフ、木彫、ブロンズなどの多様な手法を用いて独自の作品世界を築いている。『宮本輝全集』(全14巻)など装幀を手がけ、1995年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。光文社古典新訳文庫の表紙画など、絵本や挿絵の仕事も多数。画文集『道に降りた散歩家』で2001年ボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞受賞。作品集に『円周の羊』『Mの辞典』など。


今展によせて   望月通陽


この春一点の絵をかいた。皿を捧げる人物の絵。皿のおもてには流し描きなのか、ひび割れなのか、文字と覚しい幾筋かの線が浮かんでいる。人物を彩る小刷毛の動きには坂田さんの俤をしのばせた、とひとりそんな気でいる。あなたに散歩の心得があるのなら、神楽坂の路地の先でこの絵を見付けてくれるはず。もし行き着けなかったら、絵の方からきっと迎えに行くから。













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