4 時代蠟燭入 江戸時代





細竹2本を合わせた小さな提げもので、時代を経た肌味の良さが気に入っています。火薬入れとばかり思っていたのですが、違いました。買い出し屋さんが用途を教えてくれました。「筒の中に蠟燭が入っていた」と。携帯用蠟燭入れですね。

花は遅咲きの桔梗で、小さく咲き、上端の花は萎れたままで残しています。桔梗は、切れば茎より白い液が流れ出します。その滴りが血を想わせ、心にいつも微かな痛みが走ります。




ジュンのこと その2


シンナー中毒になっていたのはドラムのBで、他のメンバーはすでにそのことを知っていた様子です。私は姉の送り迎え付きでしたので、メンバーの夜遊びや、シンナーの蔓延にも無知でした。

やがてBは練習にも顔を出さなくなり、外で同年代の不良とトラブルを起こす様になっていました。バンドメンバーはマネージャーにとって大事な商品ですので、Bの窮地(トラブル)にはマネージャーの配下(チンピラ)が駆けつけ、争いの相手を圧倒的な威圧(暴力)で震え上がらせ、抑え込みます。本来は臆病で気の小さいBなのですが、相手を屈服させるチンピラたちの威圧(暴力)を自身の力と勘違いし、自らトラブルの種を撒いては、チンピラたちと組んで暴力をふるう、そんな血生臭い日常が繰り返される様になっていました。

ある日、Bを除いたメンバーがマスターに呼ばれ、「今週でバンドをやめる。店にはもう伝えてある」と告げられました。私は呆然としていたのですが、Bの様子を知る他のメンバーは一様にほっとした様子で、誰も反対する者はいませんでした。その晩、いつもの様に姉に送られ、店に着くと、ステージはもぬけの殻で、置いてあったアンプやギター、ドラムも何もかもがありません。店の者に訊ねると、「○○(チンピラ)たちが来て、全部持って行った」とのこと……。

アンプや楽器は私たちが月賦で買っており、まだ支払いの多くが残っていましたが、やって来たメンバーの誰一人、「取り返しに行こう」と言う者はいませんでした。Bは姿さえ見せませんでした。こうして私のバンド活動は月賦の返済だけを残して、あっけなく終わりました。

ジュンはバンドを辞めてから、料理屋で板前修行の日々でした。私はまた、嫌でしょうがない牛乳配達に逆戻りです。もう高校時代のようには毎日のようにジュンに会い、一緒に過ごすことも少なくなっていましたが、時々は「釣りに行くか」と誘い合って阿賀野川まで出かけていました。並んで腰掛けていても、バンドのことや、Bの話題が出ることはありませんでした。私は、新たに知った遊び(絵を描くこと)に夢中になっていましたので、そんな話ばかりしていたのでしょう。ジュンに頼まれ、彼の部屋の襖全部に絵を描いたりしていました。

「あそこは辞めたわ……」。ジュンは仕事(料理屋)が長続きしなくなりました。なぜか辛抱がきかず、時には居場所さえ定まらなくなりました。私は自己流の絵を描き始め、新たな知り合いとの交流も生まれており、ジュンと会う機会はさらに減っていました。

「ジュンが捕まったぞ」と知人が伝えにきました。キョトンとする私に、「強盗で捕まった」と。Bと一緒に押し込み強盗に入り、逮捕されたのだと……。事実でした。



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